10−1、楠寮
各階、各棟の洗面所に2台ずつ、洗濯機の設置された場所があった。
洗剤は日課室前の大きな箱から自由に使うことが出来た。
洗濯をしたい人間は洗濯機が空いていればすぐに出来たが、
普通はそういうことはなく、そんなときは洗濯物を洗濯機の前に置いて
順番を待った。たいてい洗濯機の前には順番待ちの洗濯物が列になっていた。
次が自分の番、という人間が様子を見に行き、洗濯が終わっているのに
その持ち主がまだ取りに来ていない場合は、洗濯機の中からそれを取りだし、
洗濯機の蓋の上に置いて自分の洗濯を開始することになっていた。
中には持ち主が何日間も取りに来ず、洗面所の隅で放置されている
洗濯物もあった。これは完全に乾いてしまうと「自然乾燥」と呼ばれ、
持ち主を揶揄するネタとなる。
朝晩の清掃時間中は洗濯機は稼働中でも停止することになっており、
そこが清分の人間が止める。また、並んでいる列も
清掃時間には一旦解散することとされていた。清掃時間中に
残っている洗濯物は見回りに来た寮係か寮役員が
没収することになっていた。
こうした洗濯機使用のシステムは自然発生的に生まれたらしく、
清掃時間中の規則はそれに従って後から寮側が決めたようだ。
しかし、この寮側の決めた規則は寮生にとっては迷惑なので、
守らないことが暗黙の了解となっていた。ただ、清掃時間中に
寮係が見回りに来た場合はこの規則を適応させられる。
また、寮生でも寮役員の中でも真面目な人間などは
律儀にこの清掃時間中の規則を適応していた。
没収された洗濯物は土曜日の夕詣り終了後に返却された。