コラム、「ベッド割り」

部屋のどのベッドを誰が使うかは、部屋替えの最初に

部屋員で話し合って決定された。

金剛寮、楠寮を問わず、下段ベッドの方が

人気があった。理由として、下段ベッドであれば

いちいちハシゴの上り下りをせずとも済み、

また、ベッドの前の床に物を置くことも出来る、

つまり活用可能面積が広いということがあった。

しかし、私は他人が入り込んでくることが少ない、

柵で縁が囲まれている、などの理由から

下段よりは僅かにプライバシーが保たれているように感じられ、

上段ベッドの方が好きであった。特に楠寮の場合は

上段の奥側が同様の理由から好きであり、ことに旧館の場合は

完全消灯後に部屋が寝静まっても起きているとすぐ目の前にある

小さな上の窓を開け、そこから身を乗り出すようにして遙かに広がる

夜の市内を眺めるのが好きだった。寮は高台の上にあったため、

市内が一望出来たのである。そこから見える夜の街明かりの輝きは

ことに冬の澄み渡った夜気の中では殊更に我が身の不自由さや

「学園」という場所に囚われているという境遇が感じられ、

哀感の掻き立てられる美しさがあった。

このことは「眺望」も参照。

金剛寮では基本的に部屋は学年で分けられていたが、

2学期と3学期の末頃までは1年生と2年生が同じ部屋に暮らす。

また、楠寮では1年生から3年生までが常に同じ部屋に混在している。

そこで、高校2年生や中学3年生の時など、他の同室員が

同級生か後輩ばかりの時は下段ベッドを取らなければならなかった。

もちろん、希望すれば上段ベッドも使用できたが、

「確実に取ることが可能なのに下段ベッドを取らないのは変わっている」

と思われるのを避けたかったためもあるし、自分が上段を使用することで

下段に行くことになった下級生がいずらいだろうと思われたのだ。

それくらい、部屋の中の最上級生は全員下段ベッドを

使用するというのは常識となっていたし、極度に閉鎖的な学園生活においては

なるべく変わり者と思われないことが円滑に寮生活を送り、

無意味な厄介ごとを避けるための一つの条件であった。

 

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