眺望
寮舎は市内の高台の上に建っていたため、眺望だけは素晴らしかった。
楠寮で休みの昼間など、よく大体ホールの窓から眼下に広がる市内や、
その後ろにそびえる山並みを飽かず眺めた。
また、楠寮では天気のいい土日に寮舎の端にある非常扉を開け放ち、
その外の非常階段の手すりに布団を干すことが出来た。
そんなときにはおやつとお茶を買い、4階の非常階段の踊り場から
やはり市街を眺めるのが好きだった。
眺めは素晴らしかったが、すぐそこに見えるのに決して行けない場所であることが
我が身の不自由さを感じさせ、切なくもあった。
特に私は実家が学園と同じ市内にあったためか、なおさらその思いが強かった。