コラム「新館人気」
楠寮では新館の方が人気であった。確かに、造り自体は
東西の旧館に比べて新しいから無理もないのだが、
私は新館が嫌いであった。まず絨毯。旧館は普通の絨毯なのだが、
新館の絨毯は妙に化繊じみた毛足の短いものであり、足裏に気持ち悪かった。
また、寮内は座敷ぼうきで掃除をするのだが、絨毯が弱かったらしく、
入学から卒業までの三年間だけでも、目に見えて禿げてきていた。
寝室内をゴム底のスリッパで歩き回るせいもあっただろう。
また、旧館の窓は上下2段になっているのだが、新館の窓は大きな一枚窓であった。
そこで、窓側のベッドになっても夜中に上だけをちょっと開けるといったようなことが
出来ないのだ。こうした些細なことが寮生活を送る上ではなかなかな不便さを帯びてくる。
たとえば真冬に、自分だけ暑い。ちょっと窓を開けたいなどというようなときに
新館では窓全体を開けることになるので他の人が寒がったりする。また、採光のよさから、
新館は夏になると旧館に比べて格段に暑かった。
などなどの理由で、私は新館が嫌いであった。
他の寮生になぜああも新館人気があったのか、今もって謎である。