父親が微妙にサンタクロースになってしまう。だいたい全体の3分の1くらいだ。
「少しだけなんだから、それくらい何とかごまかせない?」
父は少しだけふさふさした白髭を指で摘みながら、嫌そうな顔をした。
「何か不満でもあるのか」
「いや、そういうわけじゃないけど。他にももっと純度の高いサンタはいるんだし、父さんみたいに少しだけなら,知らない人が見たら気付かないかもしれない」
うんざりしたように父親は頭を振った。サンタ帽の先に付いた白いふわふわの玉が可愛らしく揺れる。
「お前は昔からセンスがないな。誰が見たって判るだろ」
言って真っ赤なビロードのズボンを引き上げる。
「ああ、そうなんだけどね、例えば普段来てるような服だったら」
「あー」
父は自分の格好を見下ろした。両腕を体の脇で広げてみる。
「ああ、そうかもしれないな。でもまあ、本物のサンタだってジャージを着てれば気付かない人もいる」
そう言った父親の声は酷く不安そうだった。語尾が小さい。
そこでやっと私は気が付く。父親も自分の身に起きた変化にどう対処したらいいか整理出来ていないのだ。
もっとサンタ度が高ければ。
私は父から目をそらすと、その傍らにいる男に目を遣った。男は隣家に住んでいる一家の主人だ。おおよそ3分の1くらいトナカイになった彼は、うちの庭の下生えを食べたものかどうか思案している。