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失踪者リスト

男にとって、あまり親しくない知人が姿を消す。貸していた金を返してもらおうと思って連絡を取ろうとしたのだが、どうしても連絡が取れないのだ。共通の知人に尋ねてみたところ、誰もがここしばらく、彼を見えいないと言う。彼は決して素行がいいとは言えない。だから男はあまり心配していない。おおかた、とうとう警察にでも捕まったのだろう。男はあまり親しくない知人についての記事が出ていないか数日のあいだ新聞を買ってみるが、それもすぐにやめてしまう。わざわざ新聞代を払ってまで身の上を確認するほどの仲ではないのだ。共通の知人たちも誰も心配しない。

しばらくして、姿を消した知人が男の記憶からも消えてしまいかけたころ、今度は女性の知り合いが姿を消してしまう。彼女もまた、素行がいいとは言えない。共通の知人たちはやはり彼女のこともしばらく前から見ていないが、警察にでも捕まったのだろうという。男は前に一度だけ女と寝たことがあり、あまり親しくない知人が消えたときよりも心配するし、長くそのことを憶えている。新聞も1週間は買った。

こうして、少しずつ彼の知り合いが姿を消していく。いずれもあまり素行のよくない人間たちだ。減りゆく共通の知人たちはいつも何も知らず、決まって警察に捕まったのだろうという。だが、いかなる罪状であれ新聞には掲載されないし、釈放されたという話も聞かない。男は新聞の定期購読を始める。失踪した人々のリストが少しずつ自分に向かって狭まってくるように思えて、男は酷く落ち着かない日々を過ごす。

やがて男は、自分が見知らぬ人物たちによって監視されているような気がしはじめる。雑踏の中で同じ人間の顔を何度か、見かけたように感じたのだ。朝と夜とでどこをどうとはいえないが、家の中の物が動かされているような気もする。気にしすぎなのは判っているが、心配をぬぐってくれるような兆しもない。

休日、近所の河川敷でぼんやり川面を眺めていると、ホームレスに話しかけられる。ホームレスは皮膚と一体化したような手袋ごしに男の腕を掴んで離さない。ホームレスは男に、世界の真実を教えてやると言い張る。消えた知人たちがどこへ行ったのかも教えられると。当然のことながら、男は相手にしようとしなかった。

男が耳を傾けないことも気にせず、ホームレスは言いたいことをわめく。この世界は実は黄泉の国であり、我々は一度死んだのだと。男の知人たちはここでさらに罪を犯したせいで、根の国と呼ばれる地獄へ墜とされたのだと。

男はホームレスが放つ独特の臭いに気分が悪くなりながら、その言葉を端から聞き流していた。もちろん相手にする気はなく、腕を掴む力が緩んだすきに手を振りほどいて走り去る。どうやら追ってくる気はないようで、戻るよう叫ぶ声がだんだん小さくなっていく。

けっきょく、ホームレスとは二度と出会わない。監視している人物たちもいつの間にか見掛けなくなる。やがてまた、男の親しい友人が姿を消す。彼もまた、素行がいいとは言えない。共通の知人はもういない。


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