毎夜、隣のアパートの窓に掛かったカーテン越しにジャイアントスイングの影が見える。最初は見間違えかと思っていたけれどどうもそうじゃないらしい。おかげでジャイアントスイングという言葉が頭を離れない。
ジャイアントスイング
納豆をジャイアントスイング
小鳥をジャイアントスイング
体脂肪20%消滅をジャイアントスイング
そうこうしているうちに何だかジャイアントスイングが素晴らしいことのように思えてきた。けれど、だからといって実際にジャイアントスイングに挑んだりはしない。隣の影を夜毎見るに、やっぱりまともな人間のすることじゃないよな、と思うのだ。
それにしてもいったい誰が何を回しているんだろうか?その疑問は突然解けた。
ある晩、いつものように向かいの影を眺めていると「おわぁっ」という声と共に窓ガラスをぶちわり、よく肥えた中年のオジサンがこちらへ飛来してきた。もちろん腹を上にし、万歳の体勢だ。
実際には数秒のことが、とてもゆっくり感じられた。膨れあがり飛び散るガラス。それまでの余韻で笑顔のままの脂ぎった顔。ぶつかった衝撃で虚空に舞うカツラ。顔面から流れる血が宙に軌跡を描き、光を受けて煌めく。
なぜかオジサンの背後を真っ白い鳩の群が飛び去った。
ようかんを地面に叩きつけたような音を立て、オジサンは僕の部屋の畳に着地した。窓の方に目を遣れば、甲冑を着込んだ人がカーテンを持ち上げてこちらを見ている。
オジサンの反応は迅速だった。すぐに立ち上がると血だらけの顔で眩しそうな笑顔を浮かべる。
「いや、失礼した。どうぞ気にせず」
やけに爽やかな口調だ。
「では、私はこれで」
そういうとオジサンは窓辺に立ち、軽やかな跳躍で飛んできた窓へ跳び移った。上手い具合に身を屈めて部屋の中へ消える。
どこに驚けばよかったんだろう。