ハムカツ屋トップページ小説東京ベイエリアココログ支店UMA投げ込み寺寮生活支店掲示板

豆腐屋

豆腐屋のオヤジと買い物中のオバサンが喧嘩をしている。僕はそれを 通りの反対側から眺めている。切れ切れに二人の声は聞こえるのだが、 車通りが多くて何を言っているのかまではよく判らない。

最初は互角だった二人だが、見ているうちにオヤジが押され始めた。怒りの表情に当惑が加わり、時折口が止まってしまう。オバサンは後姿しか見えないが喋りながら勢いづくらしく、その背中が膨らむようだった。身振りも激しさを増し、振り回される腕で空をも飛ばんという調子だ。反対にオヤジの動きは減り、とうとう腕組みに固定された。

突然、オバサンの動きが止まった。オヤジが何か言ったらしい。車の流れが途絶える。と、オバサンは水槽から豆腐を一丁手に取り地面に叩水っぽい音がして、黒いカケラが飛び散る。どうやらアスファルトが欠けたようだった。僕は、あの店の豆腐は買うまいと決心する。


このページのトップへ