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広敷

生臭いと思って外に出てみたら、道いっぱいに鯖が落ちていた。昼の濁った光を受けて、鯖はどれも銀鼠や黒鉄に輝いている。しゃがんでよく見ると、目はやはり死んだ魚の目であった。血走って淀んでいる。風がこちらへ吹くと、生魚の臭いが顔に吹き付ける。海鮮市場と違って魚が冷やされていないため、臭いには肌に膜を張るような不快さがあった。

しばらく私はじっと鯖を見ていた、鯖の輝きは目の僅かな動きでも変化し、見つめていると黒い部分がアスファルトに沈んでいくようだった。

臭気に軽い目眩を感じ、私は立ち上がろうとした。しかし、しゃがんでいる間に足が痺れていた。私は転びそうになって、思わず足を突き出す。

堅いものが柔らかく削れる音がした。靴の裏で弾力のある豊かな感触が滑った。鯖を踏んでしまったのだ。思わず踏んだ鯖を見る。思い切り足の圧力を支えた鯖は口から小さな金魚をはみ出させていた。流金ではなく、鮒に形の似て金魚すくいでよく見る和金だ。和金は当然死んでいるのだが、鈍い鯖の輝きと気の抜けたような道路の黒との中で、その緋色の輝きはひどく映えた。

私は次々と鯖を踏む。鯖の口からは一様に和金が姿を見せる。小さな紅点がそこここに出来る。最後の鯖を踏むと、私は振り返った。横たわる魚達は黒絣に金橙を散らしたようだった。

どこからともなく一匹の三毛猫が姿を見せた。痩せて、毛並みがおろそかになっている。猫は一番手近な鯖を一匹くわえると持ち上げた。その口から和金が滑り落ち、目の粗い路面に跳ねた。死魚と目が合う。


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