ハムカツ屋トップページ小説東京ベイエリアココログ支店UMA投げ込み寺寮生活支店掲示板

ゴミ捨て場

ゴミ山の天辺に、巨大なピエロの頭のマネキンがある。マネキンは地面に接する右半分が割れて、失われていた。俺は黒いカビのようなぬめりに覆われたその上によじ登る。

頭の上からは果てしない広がりを持ったゴミ捨て場が一望出来る。降り注ぐ春の甘い陽光が積み重なった有機無機の屍を白やかに照らしている。海の方から吹き渡る風のせいで地面全体ががべらべらと震えて見える。見上げると空は雲一つなく、明るい菫色の空はどこまでも平板に晴れ返っている。

ふと見ると、ピエロの薄汚れヒビだらけの眉の上に干涸らびた魚の死骸が乗っていた。俺は片手をピエロの額の上に突き、もう片方の手で魚の死骸を手に取る。魚はすっかりマネキンに張り付いており、剥がすときに粘つく感触が指先を蝕んだ。

指先に摘まれた魚を俺は顔の前にかざして観察する。ミイラになっていてはっきりしないが、どうやら鰺のようだった。茶ばんだそれは長らく日に晒されていたようで、鼻を近づけても何の臭いもしない。もっとも、ゴミ捨て場は至る所に脱臭された腐臭と錆臭さが漂っているせいで嗅覚が麻痺しているのかもしれない。

ゴミ山の下の方を痩せさらばえた犬が、あてどなく歩いていた。よほど弱っているようで、それは歩いているのか止まっているのか、酷く曖昧な足取りだった。

俺は鰺を犬目掛けて放ってやる。緩やかな弧を描いて鰺は錆びた冷蔵庫にぶつかり、砕け散った。驚いた犬がびっこを引いて逃げ出す。

引き絞るような音が聞こえ、俺は頭を上げた。上空高くを飛行機が、編隊をなして飛んでいく。また、爆撃が始まるようだった。


このページのトップへ